Report 3

 
「不在の部屋 / 磯部沙恵里」
2011/11/05
text by necojitan
photo by KJ
 

旧・原田米店の一角にある、磯部沙恵里さんの展示です。入口にはトランプが舞い、赤いカーテンが印象的です。


 
 
壁に展示されたドローイングと、開けてビックリ、しかけ小箱の世界を堪能できます。


 
 
本が鳥になったり、かたつむりがリンゴになったり…。吊り下げられたものや壁に掛けられた絵、そして小箱の中は、どれも細やかな手仕事がかいま見える作品です。


 
 
ドローイングの一枚一枚に細かな情景が描き込まれていて、じっくり鑑賞するとたくさんの発見があります。


 
 
ワークショップに参加すると、持ち込んだ箱を使ってしかけ小箱をつくることができます。(蝶のランプの前にあるのは、猫が繋がったかわいらしい作品です。逆光御免。)次回のワークショップは11月27日。どうぞご参加ください!

 

 
執筆者

necojitan
1985年生まれ。松戸市在住。普段は店舗ディスプレイ案作成、内装施工などの空間演出デザインを手掛けています。

 
 

「りきりき(西尾千尋・山口礼子)インタビュー」
2011/11/12
interviewer / text by 吉野元春
photo by KJ
 

りきりき 「浮遊ライン」 新角ビル3F

 

ー「りきりき」って?

インタビュアー(以下、「I」):よろしくお願いします。お訊きしたいことはいくつもあるんですが、まずは自己紹介から伺ってもよろしいでしょうか。まずは「りきりき」の馴れ初めから。

山口:最初に一緒にやるってなったのは展覧会の企画ですよね。

西尾:りきりきは展示の企画を元々やろうと思っていたユニットで、その共通に扱っているテーマとして、身体が動いたということ自体を残したいというところがあった。手段としても、共通してドローイングがあったんです。二人の共通点はそこなんだけど、もっと取り組み方の違う、例えばダンサーとか、身体とか知覚とかに対して取り組んでいる色んな作家さんと何かできないかなと考えて。だから元々は企画ユニットなんですよね。でも、ある程度二人でやる制作も、お互いの違いとか似ているところを探るためにやろうとなって、ちょうど松戸の旧・原田米店(松戸にあるアトリエスペース)を一緒に借りられることになったので、夏くらいまで二人でドローイングしたり映像を作ったり、どこでも発表していない習作のような作品を作っていました。

I:少し戻って、西尾さんと山口さんは元々何をやっていたかということを伺ってもいいですか。

西尾:私は元々、映像とインスタレーション。映像は、パフォーマンスをしながら映像を作るということをやっていて、それは妹を巻き込んで二人で。それをインスタレーションとして出すということです。
凄く具体的に言ってしまえば、ビデオカメラを手に持って、二人でそれを渡しあう作品とか。カメラがパフォーマンスの中で何かの役割を果たすと言うか。そういうものを作っていたんです。

山口:私はダンスをやっていたんです。ダンスでは身体の動きが消えてしまう。それは時間とともに流れ去ってしまうものです。その身体の痕跡を残せないかと考えてドローイングを使うようになったんです。境界線はどこなんだというようなことも考えて。

I:二人が出会ったのは、大学ですか。

西尾:東京藝術大学ですね。私は卒業生なんですが、助手になって大学に戻って来て、山口が現役の学生としていたんです。

山口:先生や先輩から、西尾さんという人がいるよ、手法が似ているから調べてみたらいいんじゃないというようなことは言われていたんです。それで西尾さんの卒制を見たりして。そうしたら西尾さんが助手で入ってくるとなって、それで先生が仕組んで(笑)

I:「りきりき」というユニットの名前はいつごろどのように決まったんですか。

西尾:企画をやってみようという段階で、ユニット名くらいちゃんと決めようと。けれども私のネーミングセンスがあまりにもないんです。いろいろと考えて一つも思い浮かばなくて。「茶ボブ・黒ボブ」とか。山口が茶ボブだったのに髪の色が変わって黒ボブになるし。そうしたら山口が色々送ってくれて、「りきりき」の原型になったのは「りきひりき」という名前で。それは「力」と「非力」で「りきひりき」なんですよ。

I:「力がある人」と「非力な人」と。

西尾:私が「非力」。

I:山口さんは「力がある」ほうですか。

西尾:私がアトリエの、床を張り替えた時のことなんです。私は決してこの体格にしては極端に非力ではないはずなんだけれども……古い畳は凄く重かったんですね。

山口:ふふふ。

西尾:それで畳を起こして持ち上げたら、畳の下に足が挟まったんです。それで動けなくなったんですね。一人でもなんとか、と思っていたら山口に「あ、もう千尋さんいいです、掃除してて下さい」って。

山口:戦力外通告しちゃって(笑)。

I:山口さんは持てたんだ。それで「力」「非力」。でも「非」は外したと。

西尾:そう、あんまりだから(笑)

 

ー今回の作品「浮遊ライン」とは。

西尾:今回の「浮遊ライン」という作品では、町のなかにあるものを使おうと思って始めたんです。夏までにやっていた作品のなかで、二人の間にアクリル板を置いて、お互いの体の線をなぞっていくということをやりました。それを町の中の素材を使って出来ないかなと考えた時に、しっかり周りを囲われた電話ボックスという小さな空間がとても面白いなと感じて、それを使おうと。
そこで、この二人の距離感と、中から外を見るということと、外から中を見るということ、それらの出来事をドローイングとして浮かび上がらせようと考えました。それがコンセプトです。アクリル板ではお互い同じ関係だったものが、電話ボックスでは内と外の関係ができて、中から描いている人を外から描くということになる。

山口:指でなぞる、という些細な行為は日常のなかで、視線で追うとか、自然にやっていることと同じです。公衆電話でやっている時も指でなぞるだけ。同じなんですけど、それをプロジェクションして展示場所の壁に映して、そこで実体にしていく、線として固定していくことでそれが物質としての線になる。

西尾:実はけっこう複雑な作品になってしまっていて、最初に電話ボックスでやることはお互いを内外から指でなぞるだけ。それを映像にして映しだして、壁とかアクリル板とかいろんな所に、その時点でさらにドローイングにしていく。実際になぞっている時点では、線はどこにもない。どこにもないしどこにでもありうる線を、表現できればと。例えば、ここでこうやって指で宙をなぞった線はどこかにありうるかもしれない。ここに一枚アクリル板があれば浮かび上がるかもしれない。その描き留めることの可能性みたいなものを出したかった。
ここまでの説明では電話ボックスには、何も残らないことになるんですが、今回は映像を撮った後に実際の線を残しているんです。

 

I:いま実際に描いてありますね。電話ボックスに線を残すことの意味は何なのでしょう。

西尾:痕跡を残したかったんです。新角ビルとは別の線ですが、同質の行為です。それによって関連付けをしたかった。映像をよほど注意深く見ないと、あれが電話ボックスだとも気づかない。この電話ボックスで、この映像に映し出されているこういうことが起こった、という関連付けのためにやっています。

I:最後に、それを以って伝えたいことは何なのか、伺ってもいいですか。それが社会的なメッセージである人もいれば、視点の提示だったり、気持ちいいっていうことだったりする人もいるし。今回は、どう思ってもらうといいと言うか、どういうことが伝えたいのかな、と。

山口:うーん。社会的なものでは決してないですよね。

西尾:いやいや、わかんないよー。

山口:ああ、でも今回に限っては、町に出ると、色いろあるんだなあと言うか。警察の人が来ちゃったりとか、何やってんだろうあの人たち、みたいな視点を感じたりだとか。

西尾:子どもが何て言ったかな、さっき。「描いちゃだめー。だめなんだよー」って(注:このインタビュー直前に、りきりきは電話ボックスへのライブドローイングを実施していました)。ただ、関わり方としてはとても薄くて、ほとんど関わらない方で作品をつくろうとしている。公衆電話という町の中のものを使いながら、直接的なコミュニケーションは全く無い。二人の相互の関係の中にあるものを取り出すことで、他の人にもなんとなく察してもらう。
実はもう少し、他の人に参加してもらって描いてもらったりとか、そういうワークショップ形式もありえたなとは考えます。それも今回については面白かっただろうと。どっちが良かったかはわからないけど、決してどうしても二人の関係性の中で完結させたかったというわけではないんです。

I:この二人の中で、とは言いながらも町に出ている。けれど決して人を呼んでくる訳でもなく。作品に入れ込む社会性のバランスというか、位置の取り方というのが凄く面白いなというふうに感じました。

西尾:たぶんすごく微妙なバランスを目指しているんだろうけど、今回はもう少しそっち側へ踏み出しても良かったかな。「人」寄りに。

 


 

 
ーアフタートーク

I:「指でなぞる」ということが、例えば「のけぞる」とか「足を組み替える」という、その場限りで消えて行く日常の挙措とつながっている。消えるはずのものが線として残るという過程全体が作品になっているというところの、うーん、この面白みは何なんですかね(笑)。

西尾:特に山口がやってきたことは、身体が瞬間的に動いているそのことを形にしたいという欲求が強いんじゃないかなとは思っています。私は今回のドローイングの作品はある程度、彼女がやってきたことから、「じゃあこうしてみよう」という感じでやってきたところが大きいなと感じていて、少し違うやり方もやってみようとか。彼女としては、こんな線じゃないというようなところもあるのかもしれない(笑)。

山口:今日やってみて、初体験だったんですけど、動いている雲を描いたんです。西尾さんは雲の映像をトレースすることはこれまでやっていて……

西尾:映像の中の動くものをトレースするということをインスタレーションとしてやって、そのなかで、流れていく雲を線で追いかけて描いて行くことをやっていたんです。

山口:私は今日は、実際に動いている雲を描いて。西尾さんは絶えず変わっていくものを追いかけるということに合わせて、線が混じり合って、がーーっと連なっていく。私はガッチリと、一本の線で固定したいという欲求があるんですけど、「雲もあるよ」と提案されて。雲に初挑戦。

西尾:その落としどころは見つけないようにしているんです。

I:そのお二人の線に表れる違い、というものは、お二人が共通項から出発してユニットを組んだということより必然的に、作品に表れるのかなという気がします。今日はありがとうございました。

 

 
執筆者

吉野元春
横浜市戸塚区在住。かつてトゥール・ポワティエ間の戦いが起こった10月10日に生を享ける。尊敬する人物は吉本隆明と古井由吉。

 
 

「松戸のためのインスタレーション
― 放射能ではなくたくさんの希望の光を ― / 瀧澤潔」
2011/11/05
text by necojitan
photo by KJ
 

松戸駅の東西を結ぶ宮ノ越地下歩道。そこに瀧澤潔さんによる、「松戸のためのインスタレーション」と題した作品が展示されています。地下歩道のタイルを放射状に白く塗っていくことで、地下道に光を生み出しています。


 
 
壁面の様子です。白く塗った下地の上に、赤や黄、青など様々な色によって描かれた丸が、あたりを明るく彩ります。


 
 
11月5日に行なわれたワークショップには、親子連れや通りがかった人が訪れ、型を使って丸を描いていました。なかには筆で絵を付け足してみたり、丸を組み合わせて顔を描く人もいました!


 
 
描いていると、だんだん人が集まってきます。みんな興味津々の様子。


 
 
ワークショップの結果がこちら。展示とあわせて観ることができます。駅前にお出かけの際には少し足をのばして、ご覧になってみてはいかがでしょうか。

 

 
執筆者

necojitan
1985年生まれ。松戸市在住。普段は店舗ディスプレイ案作成、内装施工などの空間演出デザインを手掛けています。

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